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デニム中毒者のたわごと

『文藝月光』&poetry

十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つ

 

今回のタイトルにぴぃ~んときたアナタ、立派な宮沢賢治さんファンですね^^

これ、『注文の多い料理店』の序に出てくる文章なんです。個人的にこの作品で最も好きな部分が「序」なんです、本編でなく。

あんまり素晴らしいので、丸っと写します。賢治さんの声に耳を傾けてください。

       注文の多い料理店  序

わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。

またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。

わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらつてきたのです。

ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つたりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです。

ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。

けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。


           大正十二年十二月二十日     宮沢賢治

大正12年というと西暦では1923年ですね。9月1日に関東大震災が起こった年です。その3ヶ月後に書かれたということになります。

以前、賢治さんの生没年と大地震の不思議なシンクロニシティについて書いたことがありました。
     ↓
http://tsfc501.blog66.fc2.com/blog-entry-604.html

http://tsfc501.blog66.fc2.com/blog-entry-793.html

+++++

では、1923年の関東大震災について賢治さんは何か記述しているのでしょうか?

この年賢治は27歳です。前年の11月27日に最愛の妹であるトシを喪い、傷心していた時期にあたります。7月には樺太に出かけていますね。
     ↓
http://tsfc501.blog66.fc2.com/blog-entry-604.html

でも、不思議とこの年は、いくつもの年表を見ても8月以降の記述がないんですよね。

あれだけ他者の痛みに敏感な賢治さんが、あれだけの大震災に対して何の記述もないのは解せません(現在のように細部にわたる情報を入手できないとしてもです。たとえご自身の内面が、どれだけの痛みに苛まれていたとしてもです)。

ボクらが知っている賢治さんなら、当然、何らかの声を発しているばずなんです。

+++++

で、ようやく見つけました。

翌年の1924年に自費出版した『春と修羅』の中にあったんです。
     ↓
http://tsfc501.blog66.fc2.com/blog-entry-794.html

この中に 「宗教風の恋」 という詩があります。そこに、こんな記述があるんです。

 風はどうどう空で鳴つてるし
 東京の避難者たちは半分脳膜炎になつて
 いまでもまいにち遁げて来るのに
 どうしておまへはそんな医される筈のないかなしみを
 わざとあかるいそらからとるか
 


全文はこちらでどうぞ。
     ↓
http://www.ihatov.cc/haru_1/059_d.htm

また、「昴」 という詩ではこうです。

 市民諸君よ
 おおきやうだい、これはおまへの感情だな
 市民諸君よなんてふざけたものの云ひやうをするな
 東京はいま生きるか死ぬかの堺なのだ


こちらも全文が読めます。
     ↓
http://www.ihatov.cc/haru_1/062_d.htm

両方の詩も、書かれた日付は1923年9月16日になっていますね。
そうです。関東大震災からちょうど半月経った頃なんです。
そして10年後の9月の同じ頃、賢治さんの容態は悪化の一途を辿り、21日に亡くなられたんですよね。

賢治さんの一生を振り返ると、どうにも9月と11月に「何か」が起きています。不思議なシンクロニシティですね。

もうすぐトシの命日がやってきます。彼女が仮に存命だったとして、この11月5日に113歳の誕生日を迎えていたことになります。

同時代人なんですよね、ほんとは。
トシさんも、2歳年長の賢治さんも。





*Edit ▽TB[0]▽CO[2]
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~ Comment ~

「注文の多い料理店」 

この本、ついこの前、再読したばかりです^^

やっぱり、すっごい作家さんで感激しました。うん、うん、そう書いてありました。
彼の短編集は、中学の国語の教科書にもよく掲載されてますよね。
久しぶりに読んで、また、賢治さんの偉大さを感じました。

宮沢賢治さんのこの作品は、本を読むのが嫌いな娘も夢中で読んだ記憶があると言ってました^^
これってすごいことでしょ?

すごいことデス 

ゆりさん、こんにちは^^

>この本、ついこの前、再読したばかりです^^

おっ、そうですか^^

>やっぱり、すっごい作家さんで感激しました。うん、うん、そう書いてありました。
彼の短編集は、中学の国語の教科書にもよく掲載されてますよね。
久しぶりに読んで、また、賢治さんの偉大さを感じました。

そうだろね。賢治さんの作品もまた読み返す度に何らかの発見があるんだよね。

>宮沢賢治さんのこの作品は、本を読むのが嫌いな娘も夢中で読んだ記憶があると言ってました^^
これってすごいことでしょ?

もちろん!
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