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デニム中毒者のたわごと

『文藝月光』&poetry

「左川ちか」さんを知っていますか?

 

彼女は詩人です。

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彼女の詩を朗読している動画がありましたので・・・



【青い馬】

馬は山をかけ下りて発狂した。その日から彼女は青い食物を食べる。
夏は女達の目や袖を青く染めると街の広場で楽しく廻転する。
テラスの客等はあんなにシガレットを吸ふのでブリキのやうな空は
貴婦人の頭髪の輪を落書きしてゐる。
悲しい記憶は手巾のやうに捨てようと思ふ。恋と悔恨とエナメルの靴を
忘れることが出来たら!
私は二階から飛び降りずに済んだのだ。
海が天にあがる。


+++++

サイトはこちらです。
     ↓
http://pippo-t.jp/newpage87.html

プロフィールをご覧になって分かるとおり、彼女は僅か4半世紀しか、この世に居場所を持ち得ませんでした。

そして今年がちょうど彼女の生誕から100年目にあたります。

+++++

以前は彼女の全ての詩を、ネット上で公開していたんです(※現在ではCloseしています)。

で、ちゃんとその当時、プリントアウトして、私家版の『左川ちか全詩集』を作ったんですよねー^^(いいでしょ)。

そこで、せっかくだから「独り占め」しないで、彼女の詩をいくつか紹介しようと思った次第です。

+++++

【昆虫】

昆虫が電流のやうな速度で繁殖した。
地殻の腫物をなめつくした。

美麗な衣裳を裏返して、都会の夜は女のやうに眠つた。

私はいま殻を乾す。
鱗のやうな皮膚は金属のやうに冷たいのである。

顔半面を塗りつぶしたこの秘密をたれもしつてはゐないのだ。

夜は、盗まれた表情を自由に廻転さす痣のある女を有頂天にする。


+++++

【The street fair】

舗道のうへに雲が倒れてゐる
白く馬があへぎまはつてゐる如く

夜が暗闇に向つて叫びわめきながら
時を殺害するためにやつて来る

光線をめつきしたマスクをつけ
窓から一列に並んでゐた

人々は夢のなかで呻き
眠りから更に深い眠りへと落ちてゆく

そこでは血の気の失せた幹が
疲れ果て絶望のやうに

高い空を支へてゐる
道もなく星もない空虚な街

私の思考はその金属製の
真黒い家を抜けだし

ピストンのかがやきや
燃え残つた騒音を奪ひ去り

低い海へ退却し
突きあたり打ちのめされる


+++++

【緑】

朝のバルコンから波のやうにおしよせ
そこらぢゆうあふれてしまふ
私は山のみちで溺れさうになり
息がつまつていく度もまへのめりになるのを支へる
視力のなかの街は夢がまはるやうに開いたり閉ぢたりする
それらをめぐつて彼らはおそろしい勢で崩れかかる
私は人に捨てられた


+++++

うん、とてもクールです。およそ情緒的表現とはかけ離れているように見えますが(というより、情緒に流れていくことを自制しているように感じます)、

それでもよく見ると、ちょっとした隙間から彼女の本質が見えてくるようにも思えます。

確かに旧字体を使っているから時代がかって見えるけど、内容的には「平成生まれの詩人」と言われても信じちゃいますよね。

彼女が健康で、戦争も生き延びて詩作を続けてらっしゃったら、どんな詩を書いていたんでしょうね。

彼女が生きた時代は、そういえば「大正」から「昭和」にかけてのモダンな時期に相当します。そして彼女の「生」のターニングポイントとして12歳時に「関東大震災」が起きています。

彼女は北海道在住でしたから、直接的な被害はなかったでしょうが、それでもかなりのショックだったことは想像に難くないです。

+++++

彼女は親族の反対を押し切って高等女学校に入学し、更に師範科に進学して英語の教員免許を取得します。

(1928年ですから昭和3年です。彼女は17歳で、自分の「生」があと8年ほどしか残されていないことを、もちろん知りません)

蛇足になりますけど、現在の日本に「師範学校制度」を復活させてもらえないですかね。「職業」としてでなく、「生き方として」のプロフェッショナルな教師を育成するためにです。

未来の日本のことを考えると、何よりも優先すべき課題は教育の抜本的改革にあることは自明だと思っているんですけどね。

いつも主張していることなんですが、やはりそれを願います。

+++++

ボクはまだ読んだことないですけど、彼女が翻訳した小説や詩も遺されているようですね。たとえば、ジェイムズ・ジョイスやヴァージニア・ウルフとかのビッグネームの名前も出てきます。

これから探して読んでみようと思います。

あの時代に彼女のヴォイスは、どんな風にそれらの小説を日本語にパラフレーズしたのでしょうか? とても興味があります。






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~ Comment ~

古びない 

ショック。今書いたコメントを誤って消してしまいました。

でも、言いたかったのは、いい詩だなって思ったことです。

時間がなくなってしまったので、それだけ書き残しておきまーす。

コウさん、わたし好みの詩を読ませてくれて、ありがとう、と伝えたいですヮ 笑

お察しします。 

まおまおさん、こんにちは^^

>ショック。今書いたコメントを誤って消してしまいました。

あっちゃあ~~! ボクもしょっちゅう、やらかしちゃうので、気持ちはよおく分かります。

>でも、言いたかったのは、いい詩だなって思ったことです。

それなら良かったです^^

>時間がなくなってしまったので、それだけ書き残しておきまーす。

はい。くじけずに書いてくれて、ホントにありがとー♪

>コウさん、わたし好みの詩を読ませてくれて、ありがとう、と伝えたいですヮ 笑

じゃあ、また別の詩をいずれUPすることにしましょう^^

知りませんでした。 

しかし、もの凄いエネルギーを感じさせてくれる詩ですね・・。
この後に始まるダダイズムの先を走っているような才能とセンス。
いや、センスではないな。
この時代の多くの人が持っていた、強い叫びのようなもの。
それを言葉にした・・
いやいや、どんな風に書いても、その時に生きていない私が言えば、それは陳腐になってしまいます。

しかし、いつもいつも、コウさんの在庫は凄いですねー。
これにはまた、圧倒されましたよお。

私も最近斉藤茂吉さんの歌の凄さを知って、それからこの辺りの文学を勉強し始めています。

>未来の日本のことを考えると、何よりも優先すべき課題は教育の抜本的改革にあることは自明だと思っているんですけどね。

ええ、ホントにそうです。
民度が恐ろしいほど高い、などと海外では賞賛されている日本ですが、このままではいずれダメになるでしょう。
確固たる物差しがないまま、人の(日本人の)心にある「はず」の良心に頼っていては、いつか美しさは消えていくと思います。
そして消えてしまったモノは、もう取り戻せないのだと思います。

四季を感じ、「もののあはれ」や「をかし」という知的な美を感じられる能力とか、
「足ることを知る」という教えとか。

でも現代は時間が進むのが速いんですよね・・。

そんな愚痴はこぼしていないで、私もコウさんに負けずジタバタします(^^;)

世の中すごい人だらけですねー 

サイさん、こんにちは^^

>しかし、もの凄いエネルギーを感じさせてくれる詩ですね・・。
この後に始まるダダイズムの先を走っているような才能とセンス。
いや、センスではないな。
この時代の多くの人が持っていた、強い叫びのようなもの。
それを言葉にした・・
いやいや、どんな風に書いても、その時に生きていない私が言えば、それは陳腐になってしまいます。

サイさんが感じられたことが正しいことなんです(きっぱり)。
と、ボクは思っているんですけどね。ただし、その後変わったとしたら、今度はそれが正解なんです^^

>しかし、いつもいつも、コウさんの在庫は凄いですねー。
これにはまた、圧倒されましたよお。

人間を200年もやっていれば(何者?)、何かと無駄なもの(←家人曰く)が増えてしまうというサンプルです(笑)でも喜んでいただけたようなので、また小出しにしていきますね^^

>私も最近斉藤茂吉さんの歌の凄さを知って、それからこの辺りの文学を勉強し始めています。

うん。凄みさえ感じられる歌がありますよね(ご母堂が亡くなられる場での歌とか)。それと、改めてご子息である北杜夫さんのご冥福を祈ります。北さんだと、近年の短編集で『消えさりゆく物語』が良かったです。

>>未来の日本のことを考えると、何よりも優先すべき課題は教育の抜本的改革にあることは自明だと思っているんですけどね。

>ええ、ホントにそうです。
民度が恐ろしいほど高い、などと海外では賞賛されている日本ですが、このままではいずれダメになるでしょう。
確固たる物差しがないまま、人の(日本人の)心にある「はず」の良心に頼っていては、いつか美しさは消えていくと思います。
そして消えてしまったモノは、もう取り戻せないのだと思います。

はい。

>四季を感じ、「もののあはれ」や「をかし」という知的な美を感じられる能力とか、
「足ることを知る」という教えとか。

ねっ。

>でも現代は時間が進むのが速いんですよね・・。

時間を短縮させるために発明したものたちで満ち溢れているのに何故なんでしょうね? そういうところに大きな「考えるべきこと」が潜んでいると思っているんです。

>そんな愚痴はこぼしていないで、私もコウさんに負けずジタバタします(^^;)

ようこそ! ジタバタ倶楽部へ♪

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素晴らしい! 

とても貴重な本ですので、大切になさってください^^
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