デニム中毒者のたわごと

『文藝月光』&poetry

こんなもんじゃ

 
山崎方代さんという方をご存知ですか?
字面を見ると女性に思えるかもしれませんけど、男性です。「やまざき ほうだい」って読むんです。こんな人です。
     ↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%B4%8E%E6%96%B9%E4%BB%A3

俳人の尾崎放哉さん(1885-1926)や種田山頭火さん(1882-1940)とイメージが共通する歌人ですよね。ちなみに方代さんの生没年は1914年-1985年です。

かなりコアなファンも多いようで、検索すると愛情溢れる記述が、たくさん見つかります。興味のある方は調べてみてください。

ボクが持っているのは、『こんなもんじゃ』という歌集です。

こんなもんじゃ 山崎方代歌集こんなもんじゃ 山崎方代歌集
(2003/06/26)
山崎 方代

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いくつかピックしてみましょうか。

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人生はまったくもって可笑しくて眠っている間のしののめである

まばたけるわがまなそこに映えているなべてのものは過去にすぎない

かさかさになりし心の真ん中へどんぐりの実を落してみたり


あの人はもうかえらないさらさらと枕の下を水流れゆく

こんなにも赤いものかと昇る日を両手に受けて嗅いでみた

一本の傘をひろげて降る雨をひとりしみじみ受けておりたり


何のため四十八年過ぎたのか頭かしげてみてもわからず

しょんぼりと五十二歳の手をひろげうらを返して今日を過しぬ

わたくしの六十年の年月を撫でまわしたが何もなかった


一生に一度のチャンスをずうっとこう背中まるめて見送っている

夜の深々と更けている耳が片っ方おちている


ほそぼそと一本道の日暮れどきひとりぼっちの姉の名を呼ぶ

ねむれない冬の畳にしみじみとおのれの影を動かしてみる


死ぬ程のかなしいこともほがらかに二日一夜で忘れてしまう

声をあげて泣いてみたいね夕顔の白い白い花が咲いてる


いつのころか知るべくもなく真うしろに猫背のかげを落してぞゆく

近づいて来る足音に追い越されいつもの道の足も弱った


++++

方代さんは、8人兄弟の末っ子として生まれました。「方代」という名前は本名でして、長女と五女以外の子どもを亡くした両親が「生き放題、死に放題」にちなんで名付けたそうですね。

サリンジャーさんや、カート・ヴォネガットさんと同様に、方代さんにも戦争体験は大きな影を落しました。戦争後遺症と呼んでもいいと思います。

南方戦線で右眼を失明し、左眼も視力0.01となり、傷痍軍人の職業訓練で習った靴の修理をしつつ各地を放浪する生活が始まったんです。後に方代さんはこんな風に語っておられます。

「兵隊にとられ、戦争に引っぱっていかれた七年間のあいだ、私は、心の底から笑ったことは、ただの一度もなかった。……何のために、人殺しの訓練をして、人を殺さねばならんのか、まるっきりわからない。まさに私にとって軍隊生活は地獄の苦しみだ」

+++++

現在に至っても、「戦争は必要悪だ」なんて発言する輩が後を絶ちませんが、断言します。

戦争は絶対悪です。

方代さんは1985年の8月19日に亡くなりました。享年70でした。





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