デニム中毒者のたわごと

Literature

大いなるデジャヴュ その5

 
村上春樹さんの話題の続きです。

今回シリーズ『大いなるデジャヴュ』の初回に「免色」という名前について語りました(とても印象的であると共に『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を連想させるとも)。そんな風に近作では何かと印象的な名前を登場人物に付与する春樹さんですが(二作に登場してきた「牛河」や『1Q84』の「青豆」「天吾」あたりか記憶に新しいです)、デビュー当時はそうではありませんでした(むしろ名付けることを拒んでいたところがあります――ご本人もそう明言されていました)。



ところが故・安西水丸さんの本名である渡辺昇を借用するようになって以後(初出は短篇集『パン屋再襲撃』に収録されることになる「像の消滅」の飼育員の名がそうでした――ただし、『文学界』に掲載された時点では「渡辺進」でしたけどね)、そういう呪縛からは逃れられるようになったようです(そうすると生来の凝り性である部分が活性化されることになったんでしょうね、現在に至る独特な命名ぶりに繋がったわけですーー人物名に限らず)。



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それと、どうしても「井戸(あるいはそれに類似したもの)」に触れないわけにはいきませんね。

村上春樹さんと井戸といえば何てったって『ねじまき鳥クロニクル』を挙げなければなりません。春樹さんにとっても重要な意味を持つ作品ですが、この中で井戸が大活躍します(間宮中尉が井戸の中で過ごすシーンはレイ・カーヴァーの「僕が電話をかけている場所」に影響を受けたようです)。



とはいえ春樹さん、デビュー作の『風の歌を聴け』にも既に井戸を忍び込ませているんですよね(先にリンクを貼った過去ログでも語っていますが、興味のある方は実際に読んで探してみてください)。



もちろん井戸的なものは今作にも登場してきて、かなり重要な意味を持ちます(いわゆる「壁抜け」的な現象も起こりますし、その異界とのあわいで、血生臭いことも起こります――殺人と懐妊です)。

これもまた既視感のある事例ですよね。『海辺のカフカ』でも『1Q84』でも。

つづきます。



   

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