デニム中毒者のたわごと

Literature

大いなるデジャヴュ その1

 
満を持して村上春樹さんの『騎士団長殺し』について語ります(要するにようやく図書館に予約していた順番が回ってきたということです)。何せ半年以上前に刊行された作品ですので今更めいた感は拭えませんが、ご容赦ください。





本来ならソッコーで入手して読むべきところなんですが、どうにもここ数年は春樹さんの新作に疑問を持っていたため、なかなか触手が伸びなかったのです。

で、です。結果的に既視感で一杯の読書体験となりました(これまた想定内でしたけどね――ただ、その想定自体が予想を遥かに超えていましたけど……)。

まず、プロローグ冒頭からして登場してくるのが〈顔のない男〉です。もちろん初出ではありません。最初は『ねじまき鳥クロニクル』、それから『アフターダーク』にも登場してきましたね。

そうして、これまたいつものように主人公は意味もなくやたらと女性にもてます(もちろん、いとも容易く性関係も持ちます)。その女性たちも春樹作品ではお馴染みのタイプです(一般的な美人という尺度とは異なっているが魅力的、細身、耳に特徴がある……etc)。

もちろん、妻も登場してきます(で、例によって主人公と離れることになります)。今回は(もしくは今回もまた)離婚ですが、このモチーフもまた村上ワールドにおいては定番中の定番です。

「潮目」というワードもポイントとして出てきました(今作では第一部の48ページに)。これも個人的には気になるワードで、数作で覚えがあります。

こんな風に村上ワード・オンパレード状態でして、そちらの方に注意が向いて、肝心の物語の中に没入していくのに苦労したのも確かです。

とはいえもちろん春樹さんです、しっかり読ませてはくれましたけどね……(と曖昧に語尾を濁す・・・笑)。

作品はWikiくんも説明していたように二冊(2部)に分かれています(第1部「顕れるイデア編」、第2部「遷ろうメタファー編」)。これもまた村上春樹印長編小説にはお馴染みのスタイルです(たとえ3巻の体になったとしても、当初は二巻で刊行されましたからね)。

ちょいと簡単にまとめてみましょうか。

「第1部 顕れるイデア編」

主要登場人物の全てが登場してきます(物語の骨格……というか前提・発端は例によって主人公の前から妻が去って行くというパターンです)が、それぞれオブセッショナル――もしくはPTSDティック――な問題を抱えています。その中でもとりわけ印象的、かつ狂言回し的役割を担っているのは免色(めんしき)という名の人物です。「免色」とは耳慣れない苗字です(日本に実在している苗字なのかどうかは分かりませんが、春樹さんのことだから創作だろうとは思います)。何より「色を免れる」ということから、容易に前作の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を連想してしまいますよね。その名を象徴しているかのように免色の髪は見事なまでの白髪です。日々そんな白髪の方たちと過ごすことが多い自分としてはイメージしやすい外見的特徴でした。

まず何よりも懐かしかったのは、『1Q84』において完全に三人称に移行したかと思われたヴォイスが原点回帰したかのように一人称で語られていたことでした(この一人称にどれだけ影響されたことか……と感慨深くなりました)。
ところが登場人物(と呼んでいいのか分かりませんが、イコンのひとつ――『海辺のカフカ』における「ジョニー・ウォーカー」や「カーネル・サンダース」のように)――であることは間違いないでしょう)の「騎士団長」の語りが特徴的でして、主人公を呼ぶのに「諸君」という二人称を使うんですよね(笑)。こんなの読んだことないです。

もっとも春樹さんはかつて『村上さんのところ』で人称問題については語っていまして、「そろそろまた一人称に戻ってみようかなということを考えています」なんてことを仰っていましたから(ただし、「一人称の新しい可能性を試してみるというか。もちろんどうなるかはわかりませんが」とも発言されていました)、あるいはこういうのが「それ」なのかもしれません(個人的には成功しているとは思えませんでしたが――ひとえにその一貫性のなさ、にです――興味深くはありました)。
それにしても、いつにも増して(  )の使用率が高いな、おいら(笑)

主人公のオブセッションとは、もちろん妻が去って行ったことなのですが(「春樹さんスタンダード」ですよね)、実は本当の底にあるのは12歳にしてこの世を去った妹の存在なんです。そもそも主人公が結婚することになったのも相手の中に妹の面影を発見したことが主たる原因だっとも言えるし、免色との関係もまた、妹の面影を宿したひとりの少女きっかけなんですよね。この年頃の魅力的な少女もまた春樹作品ではお馴染みのパターンです(ボクは読んでいる間中『ねじまき鳥クロニクル』の笠原メイのことを考えていました――年齢こそ笠原メイの方が上だけどね)。

どうやら例によって長くなりそうなので、今回はここまで。

つづきます。



   

~ Comment ~

浅い読みかた 

だったのかも、わたし。
春樹さんの作品はほぼ完全制覇状態だというのに、そんなふうに村上ワードオンパレードとは感じませんでした。単純におもしろかったのですじゃよ。
でも言われてみればその通りですね。
わたしなんかはもう、春樹さんの文章で綴られた物語であればなんでも大好き♪状態ですから、冷静な読書というのはできなくなっているのかもしれません。その空気感に浸れることが重要なのですよ。
そんな文章を書ける作家は、とてもとても少ないです。憧れます。
早く新作出ないかなぁ。

久々に 

コウさんの語りが読めてうれしいです。
続きを楽しみにしております。

んなことないきに^^ 

エムさん、こんにちは^^

>浅い読みかた だったのかも、わたし。
春樹さんの作品はほぼ完全制覇状態だというのに、そんなふうに村上ワードオンパレードとは感じませんでした。単純におもしろかったのですじゃよ。

それはすっぱらしいことです。

>でも言われてみればその通りですね。
わたしなんかはもう、春樹さんの文章で綴られた物語であればなんでも大好き♪状態ですから、冷静な読書というのはできなくなっているのかもしれません。その空気感に浸れることが重要なのですよ。
そんな文章を書ける作家は、とてもとても少ないです。憧れます。
早く新作出ないかなぁ。

決して駄作だと貶めているわけじゃないんだけど……。でも、春樹さんならもっと違ったかたちに仕上げられたんじゃないかな? ってのが正直な感想です。常々言ってる持論だけど、やはり春樹さんの最良の部分は短篇にあると思っているんです。だから久し振りに春樹さんらしい短篇小説集を編んでくれないかな? これ願望です。

羊頭狗肉になるかもしれやせんぜ(笑) 

うめさん、こんにちは^^

>久々にコウさんの語りが読めてうれしいです。
続きを楽しみにしております。

そう言っていただけるのは嬉しいのですが、ご期待にお応えできるかどうか心配です。
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