デニム中毒者のたわごと

music

レイモンド・カーヴァーに学ぶ  その47

 
インタビュー記事の続きです。

♦本当に感動したことを書かなくっちゃ♦

――『エスクァイア』誌に載った「二十二歳父の肖像」でお父さんのことを書いていますね。あなたが作家になりたいと言うと、お父さんが「自分が知っていることを書け」とおっしゃったと。あれは偉大な忠告ですね。ここ何年かのあいだに物書きに与えられてきた助言が全部、影が薄くなるようです。ブルーカラーの家に生まれたということは、どんな面であなたの作品に役立ちましたか。主題とアプローチの側面から説明してくださいますか。

カーヴァー 確かに、ぼくには主題があった。書くべきこと、つまりよく知っている人々やできごとがあった。素材を探さなければならなかったことは一度もない。それに、ブルーカラーの暮らしでは、てっとり早くずばりと物を言ったほうが何かと良いんだ。ヘンリー・ジェイムズ流の遠回しな言い方を我慢している余裕はないからね

――こんなことを尋ねたのはたぶん、わたしがこれまでにクリエィティヴ・ライティングのクラスや創作実習教室に出てみて、あなたと同じような生れや育ちでありながら、大学の教授の生活などについて書いている人が多いのを見てきたからです。

カーヴァー わかるよ。彼らは自分がよく知っていることを書くべきなんだ。大学構内の場面や教授と学生の関係なんかよりも良く知っていることが沢山あるはずだ。大学ももちろん立派な主題になる。それを使って芸術作品を作る人もいる。だが作家は、若くても年を取っていても、いい加減なでっちあげをやってはいけない。作家は説得力のある書きかたをしなくてはならない。自分が知っていること、感動したことなら、うまく書くことができるだろう。感動するはずのことではなく、本当に感動したことを書くんだ。どの人の暮らしの中にも、文学の材料になる重要な瞬間があるものだ。それを見逃さないよう注意しなければならない。書かなくてはならないのはそれなんだ。

――『ウルトラマリン』に「絵を描くのに必要なもの」という詩がありますね。わたしはあれに深い感銘を受けました。あれはルノワールの手紙から取ったいわばリスト詩ですが、物を書くことというコンテクストで使われると、良い詩や短編小説を書くのに必要なものについてのあなたの忠告のように思えてきます。

カーヴァー とくに最後の三行がそうだね。

――引用してみましょう。

キャンバス以外のすべてに無関心になること
機関車のように働く能力
鉄の意志

これは若い作家のための教訓になりますね。


カーヴァー 初めのころは、書こうとしても、今ほど外の世界を自分の頭から追い出すことができなかった。小説や詩を書くとき、または絵を描いたり音楽を作曲したりするとき、本当に大事なのは結局はこれなんだ。つまり、自分がやっていること以外のものに、いわば自分のキャンバス以外のものに無関心になることだ。これを小説や詩に置きかえると、タイプライターにはさんだ一枚の紙以外のものに無関心になるということになる。それに、機関車のように働く能力と鉄の意志。まったくこれこそ必要なものなんだ。ものを書いたことのある者なら、こういったことが全部必要だと、必須条件だということがわかっている。もちろん、核心をついているこの数行は、ルノワールの手紙から取ったものだ。だからこの詩は一種の発明詩ということになる。だが、若い作家がこの数行に含まれる忠告に従わずに、失敗することもあるだろう。ここに挙げられているものは全部必要だと思う。もしも、たとえば詩神(ミューズ)がそばに来たら、たとえそのとき車の修理がどんなに大事だとしても、タイプライターを持ってきて、その場から一歩たりとも動かず、外の世界を頭から追い出し、何もかも忘れてしまうんだ。あの詩とその行のことを言ってくれて嬉しいよ。書くことについてぼくに何か哲学みたいなものがあるとすれば、あれがそれなんだ。あの言葉も墓に彫ってもらいたいな(笑)。

つづきます。



   

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)