デニム中毒者のたわごと

Literature

レイモンド・カーヴァーに学ぶ  その46

 
インタビュー記事の続きです。

☘短編小説がもてはやされる理由……?☘

――今度は短編小説作家としてのあなたのことをお聞きしましょう。最近短編小説への関心が復活してきたようです。年々、短編小説集の出版が増えています。これはどう説明しますか。

カーヴァー これはぼくらの時代に起きたただ一つのきわめて重大な文学的現象だと思う。短編小説や短編小説作家にとって、こんな時代はこれまでになかったのではないだろうか。長編小説を書くことに関心を持ってさえいない短編小説作家がおおぜいいる。知ってのとおり、短編小説作家の中には長編作家がもらうのと変わらないような前払いを要求できる人もいる。いつだって、根本的な問題は何部売れるかということで、最近では短編小説の本がかつてないほどよく売れている。驚くべきことだよ。おおかたの大手の出版社が、短編小説の出版など小規模な出版社や大学の出版局にでも任せておけば良い事業だと見ていた時代があった。だけど今では事情がすっかり変わってしまった。短編小説作家の名前が、出版社のリストで幅をきかせるようになった。彼らの本は書評も目立つように扱われるし、出版社もいろいろな援助をしている。

――もちろん、この傾向の主な原因の一つにあなたが挙げられています。

カーヴァー そうだね。このことに関しては何を言っても手前味噌に聞こえるかもしれないし、このことを話すのは少しきまりが悪いんだが、ぼくと前後して短編小説を書き始めた優れた作家がほかにも何人もいると思う。ぼくに恵まれた成功と他の人に恵まれた成功があいまって今日の現象の原因になったんだ。きっと、ぼくに起こった良いことは、ぼく以外の短編小説作家全てにとっても良いことだった。けれども一九七八年のチーヴァーの短編小説の出版も重要な原因だった。おそらく多くの若い作家が何が起こっているのかを知り、勇気づけられたことだろう。長編小説のことなぞ気にせずに、もっぱら短編小説だけを書いても大丈夫だと感じ取っただろう。チーヴァーの本が沢山の短編小説作家にとってゴーサインになったんだ。今現役の短編小説作家は沢山いるし、ぼくは自分もその一人だと感じている。

――どの短編小説作家が好きですか。

カーヴァー ああ、トビー(トビアス)・ウルフが好きだよ。素晴らしい作家だ。ジョイ・ウィリアムズも素晴らしい作家だ。リチャード・フォードもそうだ。チャールズ・バクスターは良い作品集を二、三冊出した。アン・ビーティの短編小説もいい。アリス・マンローというカナダの作家は最高の短編小説作家になるにちがいない。ジェイン・アン・フィリップス、アンドレ・デュビュイ。マーク・ヘルプリンは短編小説を書かせれば一流だ。それにバリー・ハナジョン・アップダイクボビー・アン・メイソンの短編小説にも好きなものが沢山ある。ジョイス・キャロル・オーツ。生きている作家のことばかり言ってきたけど、亡くなった作家の中にも偉大な作家がいる。チェーホフとトルストイ、ヘミングウェイ、フランク・オコナー、それにフラナリー・オコナー。イサーク・バーベリ、このほか、それはもう沢山いるよ。

大御所の名前がザクザク登場してきましたね。短編小説作家として初めてノーベル文学賞を受賞したアリス・マンロー女史の名前も出てきました。カーヴァーは早くから注目していたんですね。

――短編小説への関心のほかに、文学的エリートのあいだにまで、まだ生きている人々の語る物語への関心が高まっています。あなたや、リチャード・フォード、バリー・ハナのような作家の短編小説の場合もありますし、ブルース・スプリングスティーン、ジョン・クーガー・メレンキャンプ、トム・ウェイツといった人たちの音楽の場合もありますが。どうしてだと思いますか。

ボブ・ディランがポップ・ミュージシャンとして初めてノーベル文学賞を受賞した今、カーヴァーの意見を聴くことができるなんて!

カーヴァー そうだね。もちろん一つには、こういった人たちは自分が経験したできごとを実際に自分の目で見ているということがあるだろう。その場に居合わせてそこから戻ってきた人、いわばそれを語るために生きている者には人をひきつけるものがあるからね。「あのときの様子を語ろう。これがぼくの歌だ。これがぼくの詩、または物語だ。好きなように解釈してくれ」というわけだ。こういった多くの作家や音楽家が差し出しているものには信頼できる誠実さがあるんだと思う。それは大衆にとって単なる一時の慰み以上のものなのだ。だから大衆の注意をひきつけているんだ。

「信頼できる誠実さ」――とても大事なことですよね。

つづきます。



   

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)