デニム中毒者のたわごと

Literature

レイモンド・カーヴァーに学ぶ その20

 
『英雄を謳うまい』の解題の続きです。

最後の「エッセイと考察」の章に収められた二篇のエッセイは、それぞれに示唆に富んだものだ。『フレンドシップ』においてカーヴァーは、トバイアス・ウルフとリチャード・フォードという二人の友人・同僚作家に対する親密な思いを語っている。友愛に対するその留保のない信頼は、ときとしてこちらが気恥ずかしくなるくらい率直なものだが、そこには来るべき死の影がくっきりと予感的に漂っており、文章としての気品はみじんも損なわれていない。美しい文章だ。
もうひとつの『聖テレサの書いた一行についての考察』はきわめて内省的な、もの静かな文章である。「言葉とは行為を導くものであり、それは魂を優しさへと運んでいくものだ」という趣旨の聖テレサの言葉について、カーヴァーはじっくりと腰を据えて考える。そして我々みんなが持っている「魂の中の小さな声」が、我々の苦難に満ちた人生をどれくらい温かく救ってくれるかという静謐な認識に達する。それはレイモンド・カーヴァーという魂(ソウル)を実際に救ってくれた「小さな声」でもあるのだ。自分がその声にどれほど深く感謝していることか、それをカーヴァーは人々に、とくに若い世代の人々に知らせたいと望んでいる。まるで大事な情報を譲り渡すみたいに。大学の卒業式のスピーチ草稿として書かれた短い文章ではあるけれど、そこには人の心に深く(しかしこっそりと)訴えるものがある。本書を締めくくる最後の一篇として、まさにふさわしいものだろう。


春樹さんにこう言われちゃうと、是が非でも読みたくなりますよね?

それは次回以降にて……。



   

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