レアな村上春樹さん その82

Literature


ブラックボックスとしての意識

――「ハードボイルド・ワンダーランド」のほうは、開放型といいますかね、開かれている。それで「世界の終り」のほうは、閉鎖型という感じでしょう。それが非常にうまくいってますね。

村上 あれはね、書いていてもね、順番にやると楽なんですよ。一つが開放で、一つは閉鎖でしょう。だからリズムになって、楽なんですよ。開放に飽きると閉鎖が来るでしょう、閉鎖に飽きると開放が来るでしょう。これすごく楽ですよ。

――読む側にも、そのリズムが心地良い緊張感になってきますね。

村上 自分自身も、どうなるのかな、どう行くのかなと思いながら書いていくというのはね、これは小説を書く楽しみですねえ。ピンクのスーツを着た太った女の子だって、どうなっていくのか自分でもわからないんだものね、先のことは。僕はね、見かけにくらべてわりにせっかちなんですよ。結論が決まっているとね、なるべく最短距離で行っちゃう傾向があるんです。だから先を隠しておくと、うねりうねり行けるからちょうどいいんですね。……中で主人公が迷うところがあるでしょう。それは本当に僕が迷っているのね。そうしないとやっぱりリアリティーというものが出ないですよ。だからだいたいは、小説と同じリアルタイムで書いているわけ。主人公が「やみくろ」を怖がっている時は、本当に僕も怖いなあと思って書いているし、足を捕まえられるんじゃないかと思って書いているし、そういう喜びがないと、僕は書けないですね。

――なるほどね。

村上 だから頭のいい人は自分の中で回転させてさ、書く前につくっちゃうんだよね。僕はそういうことできないから、一つずつ前を叩きながら歩いて行くじゃない。小説というのは、やっぱりそういうものなんじゃないかなと思うけどね。わかっちゃうと書けないですよ。

――村上さんの場合は、無意識の部分をいかに開放して書いていくかみたいなところが……。

村上 僕はね、自分自身の意識の殻は硬いから、自分でもわからないところがいっぱいあるんですけど、それを少しずつ、引きずり出して書いているという感じがするんですよね。意識というのは、ブラックボックスとしてあるけれども、それがどういうふうに文章に出てくるのかというのは、自分でもわからないわけね。後からなんでこんなことが出てきたのかって訊かれても、それはわからないし、わからないから読者と同じ次元に立つ。作者はこうですからつていう説明はできないですね。あんまり詳しく説明したくないというのは、そういうところもあるわけです。ものを書きながら、僕も読者と同じ地平に立って書いているという気持ちはあるんですよ。そういう気持ちがうまく伝わればいいと思う。やっぱり見下ろして書くと、見下ろした小説しか書けないと思うのね。それは純文学とかエンターテインメントとかいうことじゃなくて――エンターテインメントでも見下ろして書いているの、いっぱいあるでしょう。純文学もいっぱいあるし。かといって作者が混乱して何が何かわからなくて、グシャグシャになっていたら、それは何も意味ないし。やっぱり読者と同じ目線でものを書くというのは、僕は大事なことだと思うんですね。それは、僕がもともと文学を志した人間じゃないからそうなのかもしれないけれども。ジャズ喫茶をやっていたでしょう、やっぱり音楽を一緒に楽しもうと思う気持ちがなければ、商売にならないよね。これはいいから聴け、という感じだと、人はついてこない。僕は商売やってて――またこういうこと言うと、何か言われそうだけど――そう思うんですよね。

――なるほど。

村上
 天才は別ですよ。天才は別だと思う。モーツァルトが聴衆と同じところに立って書いていたかといったら、それは書いていないよ。本当に天からの声だと思う。ただ今の世界において純粋な意味での天才というのはほとんどあり得ないよね。自分で天才だと思っている人は結構いるかもしれないけど。


つづきます。

レアな村上春樹さん その81

Literature


村上 僕の場合、名前をつけないでしょう。これはいろいろ理由があって一口では言えないんだけれども、名前をつけないにしても、何か特徴を示す必要があるわけね。まず、その特徴から始まる。小指がないとか、双子であるとか、太っていてピンクのスーツを着ているとか。ところが、その特徴がね、書いているうちに一人歩きしちゃう。そういうことだと思うんですよね。

――なるほど。

村上 そのうちに、その特徴自体が本質のようになって、人間存在が属性のようになっちゃうのね。こういう転換みたいなものが好きですね。だから、たとえば今度の小説の主人公だって、本質があるといえばあるけど、属性で固められているような存在じゃない。今の人間存在というのも、それに近いんじゃないかな、という気はするんですね。

――ええ。

村上 属性を辿っていくと、結果的に本質に辿りつくということはあると思うんです。

――ピンクのスーツを着た太った女の子というのは、大雑把な言い方をすると、健康なセックスのありようみたいなものが出ていて面白いですね。

村上 性欲ですね。

――余計な形容詞のついていない性欲というか……。

村上 観念的な性欲なのね、むしろ。形而上的な。これまで性欲の問題というのはあんまり書かなかったからね。今回は性欲を書いてみたいと思ったんです。

――なるほどね。

村上 僕が性欲を書くと、ああなっちゃうからね。いわゆる性欲じゃなくて。中上健次のほうが健康的なのかもしれない(笑)。

――これもまた、小説の受け取り方のひとつではあるんですが、今回の小説は、今はやりの〝ニューサイエンス〟の問題、大脳生理学の問題を扱っている……という部分もあるように思ったのですが。

村上 うーん……。

――言葉をかえると、認識論みたいなところが……。

村上 うん。それはありますね。ただ、あれはあくまでフィクションですから、ニューサイエンスというのとは少し違いますよね。……脳というのはね、ちょうどアリスのワンダーランドと同じなんですよね。誰にもわかっているわけじゃないでしょう。あらゆるものが仮説にすぎないわけだし。

――僕は二回読んで、一回目の時は、SF冒険小説だ、みたいな感想を持ったんですが、改めて読むとね、これはちょっと違うと、そんな言葉があるのかどうかわからないけれども、ニューフィクションとでも言えばいいのか……。

村上 うん。僕としては、明るい観念小説みたいなものを書きたかったというのが、気持ちとしてはすごくあるんですね。

――形としてはエンターテインメントの形を借りていて、でも非常に形而上的な問題を扱っている小説と言えますね。

村上 まあ、そういうふうになっていくんじゃないかな、という気はするんですよ、これからは。ただ、そう言うと、またね、いろいろ反感を(笑)買うところがあるんだけど……難しいから観念的だ、ということはあり得ないと思うんですね。

――そうですね。

村上 あらゆる事象が観念を含んでいる以上、楽しい観念というものもあると思うし。僕はね、とくに文学を最初から志したというわけではないから、難解なものに魅力を覚えるとか、そういうことはないんです。やはり人を楽しませたいと思うし、自分も楽しみたい。だから、そういう面では、非常にわかりやすい、楽しい小説を書きたいと思うけれど、結果的に、僕自身も書きながら発展していきたいという気持ちも、やっぱりあるんです。その面では、少なくとも自分に対しては、啓蒙的なところがある。啓蒙的というと言葉がまた悪くなっちゃうけれど、書きながら成熟したいという気持ちはすごくあるんですね。「羊(をめぐる冒険)」がそうだったように、今回の小説も自分なりにいろいろ学ぶことが多かったですね。しんどかったですけどね。

――今までの村上さんの小説の流れの中で、一段階変わったなと思ったのは、例の〝シーク・アンド・ファインド〟の問題なんです。「1973年のピンボール」の時は、ピンボール・マシーンがその探し求める対象でしたし、「羊をめぐる冒険」の場合は、羊だった。ところが今度の小説では、人間の脳というか、認識のほうにそのシーク・アンド・ファインドの対象が移ったわけですね。

村上 そうですね。そういう意味では、だんだん象徴化しているというか……。一番最初の「風(の歌を聴け)」の時はもっと簡単で、ただ、女の子を探すと。「ピンボール」の時は、機械を探すと。「羊」の時はちょっと複雑になっていますよね。羊的なものと鼠とが二重になってくるわけでね。今回は小説の主体がまず二つに分裂していて、それぞれに探し求めているという、二重の二重性みたいなものがあると思うんです。最初からそういうものを書きたかったんですけど、書く訓練というのができていなかったから、なかなかそこまで書き切れなかったというか……。何かを探すといっても、探すものが、今は現実的にないんですよね。何かを探せば救われるということもあり得ないわけでね。それはつまり、自分も複雑化し、探す対象も複雑化し、生きているわけですから。

――「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」の二つのうち、「ハードボイルド・ワンダーランド」のほうから小説は始まるんですが、タイトルどおりと言いますか、ハードボイルド小説の形、雰囲気で出てきますよね。で、今回は何を探すのだろうかという期待をもって読んでいくと、途中で、あ、これはどうやら凄いことになりそうだと……。

村上 わけがわからなくなつてきちゃうのね。

――そのへんから凄く興奮しましたね。入口がハードボイルド小説の形なのに、読み進むうちに相当怪しくなってくる。……ハードボイルドというものは、やっぱり意識されたんですか。

村上 ええ、そうです。あの形を取りたかったですね。あの形を取って、違うものを書きたかったですね。カテゴライズされたものの魅力というのは、約束事でしょう。それを逆手に取って、どんどん逆転させていって、まったくわけのわからない部分に行きたい、という気持ちがありましたね。そういう手法ってあんまりやっている人いないじゃない。ただのパロディーで終ったら面白くもなんともないし。自分がずるずる引きずり込まれていって、変ってしまわなければいけないのね。そういう意味では、チャンドラーというのは、やっぱりあの小説にとっては偉大な存在ですよね。

――なるほど。

村上 それから、ハードボイルド的なものの他に、SF的な要素もあるし、いろんなものを貪欲に取り入れて書きたかったというか、今回はあらゆるものを総動員したかったんです。だから僕の気持としては、今度の小説が純文学だけじゃなくて、いろんなものを読んでいる人に楽しんでもらえるといいという気がするんですよね。……ただ、作家としては、いろんな人に要求はしたくないけれど。要求するというのは一種の契約だからね、契約はしたくないんですが。

――「世界の終り」に出てくる一角獣は、前からお書きになろうと思っていた動物なんですか。

村上 あれはね、いわゆる一角獣ではないんです。ただ、角が一本ある動物ですね。動物が必要だったんだけど、普通の動物ではなんか物語にうまく入り込めないでしょう。あれが鹿だったらちょっと困る。奈良公園になっちゃう。

――(笑)。それから前半ではほとんど出てこない固有名詞が、後半になると青山、渋谷、原宿といっぱいでてきますね。

村上 河出書房も出てくるし(笑)。

――あの青山近辺が出てくるところは……。

村上 銀座線が好きなんですよ。銀座線をね、一度登場させたかったの。銀座線、よかったでしょう。


うん。個人的にも仕事でいつも使っていたので、思い入れは深いです。

――あれ以来、銀座線の車内灯が一瞬消えるのが怖い(笑)。

そうでした、そうでした。今ではそんなことないみたいなんですけどね。

つづきます。

レアな村上春樹さん その80

Literature


世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

――今度の小説「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」にとりかかったきっかけはどんなところにあるんですか。

村上 昔「文学界」に載せた「街と、その不確かな壁」という中篇小説をね、書き直したかったというのがあって。そこに来るまで、やっぱり長かったですね。四年以上でしょう。五年近くかな。やっと書き直せるという感じがしたから書き直したんですけ時ね。それは、三部作を書いちゃったからね、書こうという気になれたんだけど。

――この小説は、「ハードボイルド・ワンダーランド」と「世界の終り」という二つの小説が交互に、並行して進んでいく、非常に凝った小説なんですが、構想ができたのはいつごろなんですか?

村上 何もできなかった。できないままに書き始めたんです。いつもそうなんだけど、僕は構成というのはほぼつくらないんです。どんどん書いていくと、最後にはつながつちゃうんですよ。――たとえば今ここにビールの缶があるじゃない、で、それと別にウサギがどこかを走ってるような風景があるとするじゃない、その二つの話を別々に書いていくと、どこかでその二つが出会っちゃうんですよね。

――ウサギとビールなら出会いそうだけど……、あの話は複雑ですよね。

村上 いや、そこがスリルなんですよ、やっぱり。もちろん後で調整はしますよ。でも、まず勢いというものがあって、その勢いがあるからこそ結びつくんで、はじめから考えちゃうと、こじつけになっちゃう。だって、書くのはボクひとりなんだから、僕が右手で考えて左手で考えても、必ずどこかで僕という中心存在につながっているから、絶対に結びつく。これは確信なんだな。

――うーん。なるほど。

村上 確信がなければ書けない。

――それで、いよいよ一行目から書いたのは、いつ頃でした?

村上 去年の四月か五月か、その頃ですね。

――だいたい毎日、何枚ぐらいのペースで?

村上 はじめは遅いですね。はじめはね、やだな、やだなと思いながら書いているのね。途中でだんだん、これはいける、という手応えが出てくると早くなっちゃう。

――どのあたりで手応えがありました?

村上 まあ、三分の一ぐらいか……四割ぐらいかな。夏すぎですね。

――人物なんかも想定しないで書き進めるわけですか?

村上 何も想定しないです。突然誰かが出て来て、あっ、こんなものが来たのか、と思って……。

――ふーん。これが不思議なんだな……。

村上 それができなかったら、小説って書けないんじゃないかな、とも思うけどね。はじめから何もかも考えて書けないですよ。面白くないもの、だって。

――ああそうか。じゃあ、メモも取らない――。

村上 メモは一切取らないですね。だから何か思いつくことはあるんだけど、書かないからすぐ忘れちゃう。二年ぐらい後で思い出したりしてね。

――今度の小説は、確かにストーリーがきっちりとある小説なんですけど、たとうば誰かが批評をするという場合に、この小説のストーリーを紹介してもしょうがないという部分がありますね。

村上 紹介してもしょうがないでしょうね。

――それはどういうことかと言うと、たとえば小説のなかにいろんな音楽が出てきますよね。人によってはそれを〝記号〟というふうに読み取るかもしれない。しかし僕は、全体的に、あれはイメージなんだ、というふうに取ったほうがいいと思うんですが。

村上 僕は、いつも生活が書きたいんです。どんな筋であろうと、どれほど分解したものであろうと、生活というものを書きたい。だから、それだけのことなんです。生活の中にはいろんな物があるし、いろんな音楽を聴くし、いろんな本を読むし、いろんな映画を観るし、いろんな物を食うしね、そういう事を書くのが好きなんです。だから、結果的にどういう効果をもたらしているのかわからないけれど、読む人の受け取り方の違いなんじゃないかな。

――そうですね。……「ピンクのスーツを着た太った女の子」というのが出てきますけど、あれは良かった。

村上 書いていてもね、すごく面白かったですね。本当にそういう女の子がいるような気になってくるし、自分で書いたことに驚いたりして(笑)、楽しみながら書きました。

――ピンクのスーツを着ているなんて、実際問題としてはちょっと変な感じなんだけれども、不思議なリアリティーがありますね。

村上 僕は今三十六でしょう。十七歳の女の子なんて、エーリアンに等しいから、その意味ではまったくのエーリアンとして書ける。

――それは「1973年のピンボール」の中の双子というのも、そういう感じがしたんですけれども。

村上 あれもエーリアンですね。

――エーリアンですね。双子にしろ、ピンクのスーツを着た太った女の子にしろ、これは書いているうちに出てきたって言っちゃえばそれまでなんですが……。

つづきます。

レアな村上春樹さん その79

Literature


――あなたの最初の記憶について。

村上 最初の記憶……あのね、僕が二つか三つの時に川に落ちたの。川に落ちて流されてね、もう少しで暗渠に入るところで見つけられて助かったんだけど、その暗闇を覚えているね。それが最初の記憶。いやな記憶ですね。

――家のそばの川ですか。


村上
 そうです。家の前に川があって、そこに落っこちたんですね。目線を覚えてるんですよ。川の底でしょう、で、水がずっと上にあって、上を見ている記憶があるんです。

――じゃあ、もしかしたら死んでたんだな。

村上
 そう簡単に殺さないで下さい(笑)。うーん、あんまのこういうこと言うと、また分析されちゃうから(笑)。

――子供の頃からずっと身近に持っているものって、まだありますか。

村上 ないです。

――人を殺すとしたら、どういう手段を選ぶか。

村上 殺さない。それほど親切じゃない。

――持ちたいと思う能力。

村上 いろいろ面倒くさいしね、いろんなものがあると。空を飛ぶとかさ、結構しんどいんじゃない(笑)。

――アハハハ。

村上 なるべく電車に乗り遅れない能力がほしい。よくあるんですよ。走っていって、目の前で電車が出ちゃうの。あれは不愉快だからね。

――あなたの性格の主な特徴。

村上 人見知りしますね。あとは、うーん……よくわかんないね、自分でも。女房に聞けば、べらべらしゃべってくれるけど(笑)。

――あなたが今一番ほしいもの。

村上 そうねえ、静かなね、車が通っていない平穏な街がほしいですね。車が嫌いだから。

――しばしば引越しをする理由は。

村上 引っ越しって、チャラにしちゃうという感じがあるでしょう。そういうの、わりに好きなんです。
店をやってた時もね、みんな店というのは永続的にあるものと思って来ているじゃない。で、ある日突然やめますという時の快感は何ものにもかえ難いですね。みんな、何でやめるって言うけど、逆に、何でやってなくちゃいけないのか、というのがあるわけね。あらゆる形あるものは終わるわけじゃない。そのぐらいの無常観を持って店に来てほしい(笑)。意外にね、店とか場所とかそういうものは永続するものとみんな思い込んでいるんですよ。

――マラソンを始めたきっかけは。


村上 あれはやっぱり身体を動かしたいということですね。それで一人でできて、どこでもできることとなると、走るしかないんですね。人となにかするのって、面倒くさいじゃない。龍はテニスやってるけどさ、一人でできないでしょう。スポーツじゃないけど、麻雀も四人いないとできないから、やらなくなっちゃったしね。一人で四役できるんなら、僕はずっとやっているけどね。

――フルマラソンを二回走ったわけですが、その時の感想を聞かせてください。

村上 いやあ、あんな面白いことないですよ。途中で自分を憎み出すのね。なんでこんなことやっているのかって、憎み出すの。

――これからも機会があれば出ますか。

村上 僕はもともとレースに出るというよりは、一人で走っているほうがね……。でも四十二キロというのはね、一人ではなかなか走る気にならないですね。皇居を七周して三十五キロまでは一人で走ったけど、飽きちゃって(笑)。だから、走る時には、レースでいい記録を出したいから走るのか、それともただ走りたいから走るのか、そこをはっきりしておかないと難しいですね。
これは文章でも同じだけど、プロとしてものを書くのか、それともセミプロで書くのかとでは、まったく違うからね。プロとしてものを書くことが、特に人生の役に立つかといったら、これはそんなことはない。走るのと同じでね。僕なんか、体調を保つために楽しんで走っているわけだから、それ以上のことは気にしないですね。昔はね、少しでも速く走って、人を抜いてやろうと思って走ったけど、今はもう、抜くんなら抜けって感じで、好きなように走ってます。


今となっては、走れるってことだけでも羨ましいし、素晴らしいことだよなあーと、切実に思います。
そしてまた、プロとしてものを書いていきたいと真剣に願います

つづきます。 

レアな村上春樹さん その78

Literature


結婚、パナマ運河、その他

――服装にはこだわるほうですか。

村上 こだわらないですね。適当なものを着ています。

――自分で買うんですか。


村上 ええ。服だけはね、いつも自分で。下着から靴下まで自分で全部買います。

――しばらく、アト・ランダムな質問を続けさせてください。好きな食べ物を三つ以上挙げてください。

村上 お豆腐、こんにゃく、それと鰹。

――そばは。

村上 そば大好き。……わりにそういうサッパリしたものが好きで、脂っこいものはあんまり好きじゃない。

――ラーメンが駄目なんですよね。

村上 中華料理、朝鮮料理は駄目です。それから、貝。肉も牛肉以外の肉は駄目。

――長篇にかかっているときは好みが偏ってくるとか。

村上 それほどデリケートじゃないです(笑)。でも最近は、玄米でいか塩辛とか納豆とか、そういうものが多いですね。

――朝、昼、夜と、きちんと食べますか。

村上 ええ、ちゃんと食べます。

――また煙草を吸うようになりましたね。

村上 そうなんですよ。長篇がいけないんです。長篇を書いている時って吸っちゃうんです。そろそろやめようと思うんだけど。

――お書きになっている時は、一日一箱ぐらい。

村上 五十本吸う。書き終えて二十本ぐらいに減りましたけどね。

――その間も、走ってられたんでしょう

村上 長篇書いてる時は、走っていなかったですよ。最後の頃はそんな暇はなかった。

――テレビや新聞を見ないのは、昔からですか。

村上 いや、読む時期もあるんだけど、今は必要ないから読まないです。それと、こういう商売をしていると、人と同じことをしてたらやっていけないんですね。雑誌をパラパラ読んで、どこかに行って、それでまた雑誌をパラパラ読む、というようなことをみんなやっているわけでしょう。雑誌とか新聞を読むのって、結構時間たっちゃうじゃにい。それに読まないでいると、情報というのはそれほど必要じゃないことがわかるし。

――ピンボールは今でもやりますか。

村上  今はゼビウスしかやってないです。

――何点ぐらいまで行きますか。

 村上 二十万。一度やると疲れて、ぐったりして帰ってくる。

――今までに飲んだ、お酒の最高の量はどのぐらいですか。

村上 あんまり飲んでいないんですよ。特にバカみたいに飲むことはないですね。

――でも、ビールは毎日。

村上 うん、毎日飲んでるね。夕方になると飲む。

――二日酔いなんていうのは、なったことないですか。

村上 二日酔いって一度もやったことないです。二日酔い、肩こり、頭痛は一度もないですね。

――結婚とは何だと思うか……。

村上 難しい話になりましたね(笑)。よくわかんないですね、成り行きだから。仮定というか、「ィフ」というのは存在しないじゃない、起こったことが起こったんだから。カポーティがね、起こったことはすべて善であるってどこかに書いていたけど、僕も実にそう思うね。それは一つの宇宙なわけだから、それがもしなかったらと仮定することは、宇宙を変えることだからね。……じゃあ核武装は善なのかって言った人がいるんだけど(笑)、それはさ、結局パナマ運河が善か悪かというのと同じことじゃない。結婚生活というのもね、パナマ運河みたいですね(笑)。

―ー今、最も行きたい国。

村上 トルコに行きたいですねえ。

――何か理由があるんですか。

村上 いや、なんとなく好きだからね。前にチラッと見た感じがすごく面白そうだったから。

――現在の仕事以外で就いてみたい職業はありますか。

村上 それもパナマ運河ですね。

――ちょっとクサイ質問ですが、村上さんにとってやさしさとは。

村上 うーん。やさしさというのは、何かそれ自体に意味があるということではないですね。何かに付随する属性だと思うのね、やさしさというのは。たとえば、怒りという行為に付随するやさしさとかね。まあ、そういうことですね。た゜から女の子がやさしさを求めるというのは、僕はよく理解できないですね。属性を求めているようなもんだから。

――同じ質問で、恐怖とは。

村上 恐怖ねえ……。僕の場合、閉じ込められることですね。それから高いところは嫌ですね。あと、切断。肉体的な切断、あれは怖いです。手を切り落とすとか、怖いですね。

――好きな動物と嫌いな動物。

村上 動物はみんな「こみ」で好きですね。だから、動物園は好き。動物園はいいですね。特に何が好きということはないけど、その時々によって、シカのお尻とかね(笑)。

――一日がもし二十五時間だったら、後の一時間を何に使うか。

村上 ……とっとくんじゃないかな。

――自信を持って扱かえる道具というのがあったら。

村上 さあ、何もないですね。

――都会と田舎では、どちらが好きですか。

村上 それもよくわからない。

――地球以外の宇宙空間に行ってみたいか。

村上 行きたくないよ、そんなの。藤沢が一番いい(笑)。


つづきます。

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Author:T.S コウ
コウです。プロフィールの画像が詐欺ではないかとの噂がありますが(笑)、ン十年前はこんなでしたってば! と言い張っちゃう^^
せっかく、このブログにいらっしゃったのですから、どうぞごゆるりとお過ごしください^^

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